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こうの史代 「夕凪の街 桜の国」 全1
原爆マンガって言っちゃっていいのか分からないけど、
最も秀逸な原爆マンガのひとつだと思う。

たった31ページの中で、広島を生きた人の
痛さがちょっと伝わるんだよ。
まさに言葉でなく心で理解できる。

「わたしは 腐ってないおばあさんを冷静に選んで
下駄を盗んで履く人間になっていた

あれから十年
しあわせだと思うだび 美しいと思うたび
すべて失った日にひきずり戻される」

すごい速さで復興して、日常を取り戻したようにみえる
広島で、いつまでも「だれかに死ねばいいと思われた」
という事実から逃れられずに生きる主人公の皆実。
そして、自分もたくさんの人間を見殺しにしたという思いから
誰かに思われて幸せになることを拒む。
ようやく自分の思いを打ち明けることができたとたんに、
坂を転がるように急速に生きる力が抜けていくラストが
衝撃的。

淡々とした、これ以上も以下もないといった語り口に
本当にこの国で起きた恐ろしい事実を思い知る。
でも恐ろしい、悲しいだけじゃない、妙に心温かくなる作品。
全3話あわせて、間違いなく傑作!5点!
# by nanako_6150 | 2007-03-05 11:55 |       か行 21件
CLAMP 「Wish」 全4
普段は作画アシスタントやマスコットキャラのみの作画を担当している、
猫井みっく(現在は猫井椿と改名)による初長期連載作品。
やはりもこなに比べてデッサン甘いし、コマ割が単純で稚拙なんだけど、
意図的に白くした画面はストーリー・テーマにマッチしていてかなり成功だったと思うし、
あのほえほえのキャラクターはもこなさんが描いたら、相当あざとかっただろうなって
気がします。

ある夜、帰宅途中の琇一郎が、カラスにつつかれているちっさい天使・琥珀を助ける。
お礼に琇一郎の願いを叶えさせてくれと申し出るが叶えて欲しい願いはないと断られ、
琥珀は琇一郎の願いが見つかるまで、彼の家の居候になる…。
んー、なんか、ものすごい迷惑な人(天使)ですね。
最終的には「ふたりでしか叶えられない願いがある」ということをテーマにした
ファンタジー恋愛マンガとなってる。

特筆したいのは、CLAMPには珍しく、計画性のない(もしくは計画の崩れた)作品ってこと。
これ、どう考えても琇一郎の活かし方に失敗してますよね…?
彼が悪魔の王のご子息である黒耀と似ているという設定は
わりとしつこく出ていたのに、全く関係なかったもんねえ。
当初からの計画で、あの最終回を予定していたとは考え難いし。
だってラストのあの男、生まれ変わりとはいえ琇一郎とはまったくの別人ですもんね。
琥珀ちゃんはあの人に仕えて幸せですか?
なので、やむにやまれず、当初予定していたストーリーを捨てたんだろうなと推測します。
してやったりの物語(決して悪口ではない)の多いCLAMPにしては、
とても珍しい、新鮮な展開になってます。
Xや合法ドラッグも休載してるけど、あれは計画性がなくて頓挫したのではなく、
出版社の意向と雑誌の廃刊が原因だからね。一応、そゆことになってる。

琥珀をいじめる悪魔の紅榴と、その使い間の瑠璃と破璃がよかったなあ。
猫井さんの描くキャラの左右非対称の髪型とか、かなりいいと思うよ。
性格的にも、単に好だからついいじめちゃうというんでなく、好きな子をいじめることで
快感を覚えるという(オイ)よく考えるとヤバい設定
が、あのさっぱりした絵だから
アリっていう微妙なバランスなのよね。
で、瑠璃と破璃も、紅榴様大好きなのに紅榴が琥珀のこと好きでも
全然かまわんという、かなりMな人たち…。
うーんけっこう大人向けだわ。

↑以上は超考えなくていいことです。最高に最低な読み方です。

CLAMP全作品中もっともキャラの描き分けができてない作品。3.5点!
# by nanako_6150 | 2006-12-31 14:57
CLAMP 「CLOVER」 1~4
今はなき少女マンガ誌「Amie(アミ)」にて連載された作品。
休刊となってしまったため完結してない。

極細の線と、機械+ゴシックなファッションと建築。
余白の多い不規則なコマ割と小タイトルの多用。

などなど、画期的な手法が作画の面で多様に見られた、かな。
今までなかったことではないんだと思うけど、特に小タイトルの多用に関しては、
単行本になったときに連載の切れ目を意識させないようにするには
すごくよい手法よね。もちろん展開切り替えがせわしなくなるから
読者つきはなし気味になる感はいなめなけど。この作品にはよく合ってると思う。

で、ストーリーですが、これ、大枠でとらえるとレイアースに似すぎじゃないかと…。
以下超ネタバレ。
よく分からん任務を与えられて目的も理解せず(もしくは誤解して)到達点を目指し、
任務の達成とともに悲しい事実を知りることになる。
あの、エメロード姫が実はああだったというのと、似てるよねえ。
CLOVERの和彦とスウもまさにそんなんなんですよ。
で結局本人は「願いをかなえてくれてありがとう」的に散っていって
残された人は茫然自失…。いやあ、救われねえ。

まあ、そんなのは大人の穿った読み方ですね!!だめねホント。
分かってるよ。この作品について語るところは別にちゃんとあるよね。
たぶん「幸せになりたいと願うことは好きな人の幸せを願うこと」とかを
織葉の章では言いたいんだと思うし、「人に受け入れられたいのであれば
自分を受け入れなくてはいけない」ということを藍の章ではテーマにしてると思う。
ということで魔法=孤独・閉鎖の、ファンタジーにしては無機質な世界観の中で、逆に
人とのつながりを浮き彫りにしようという試みなのかなと推測します。

とかなんとか分かったよーなことを書いたけどねッ、ほんとの要点はもう
全然違うところに見出してるからわたし!もっと単純なポイントだから!
藍ちゃんがかわいーんだよォーーー!
黒髪ッ!うざ髪ッ!細身ッ!(ちゃんと肩幅はあり)。物腰やわらか知性的!
銀月よりも早く老人になり間違いなく早く寿命を迎えてしまうというのが
…ああ、切ないなあ。


はい、以上。CLAMP全作品中もっとも丸ペン消費率が高そうな作品!3.5点!
# by nanako_6150 | 2006-12-12 12:55 |       か行 22件
CLAMP 「魔法騎士レイアース1・2」 各全3
ファンタジーに、タブーってあると思うんだよ。
暗黙の了解っていうか。そこつっこむなよ、ってところ。
つまり、その世界独特の言葉があるのに、技の名前は「ファイヤー・ボール」だったり。
「なんで英語だよ」ってつっこんだらいけないんだよ。
な・の・に。
この魔法騎士レイアースでは作中で登場人物自らがつっこんでますけどォォー!
「なぜ『マジックナイト』だけが英語なのでしょう」って。
それを読んだとき私は、そんな…風ちゃん…フィクションの設定になんくせつけるなんて、
と思ったとさ。あのタブーを世界構築のヒントとしてわざわざ登場させるとは、
大川さんそりゃあ強引っす!屁理屈っぽく聞こえるっす!

とまあ、作品紹介もせず、どつっこみから入りましたが、
これがこの作品の一番の特徴に見えるんだよ。
アニメで広く知られたレイアースのイメージってのは、えらく目がでかくスタイルが
よろしい少女たちが異世界で魔法と魔神(マシン・笑)を駆使して戦うという
ポップなものだと思う。で、1部の終わりはちょいヘビー、みたいな。
でもでも、これはそんなにポップじゃない。ファンタジーとして歪だと思うんだよ。
ファンタジーって異世界の設定をルールとして守っていくものでしょう?
ひとつのマルを書いて、その中で絵を描かなきゃいけないというか。
それをいつのまにかはみだしまくっちゃった!みたいな。破綻いっぱい!
でも実はその外にもちゃんとマル書いてるから大丈夫ー、って大川さんが言ってる気がした。


あ、イーグルさあ、かっこいーよね。銀髪ってずるいよ。そしてオートザムマント
似合うこと似合うこと。もこなさんは本当にコスチュームセンス抜群だと思う。
特に『CLOVER』なんかでも顕著だけど機械系ファッションが。

そういや2部の最後にランティスが「お前の国では愛を告白するときなんという?」
と聞いたらヒカルが「『結婚してください』かなぁ」と答えるけど、
飛躍しすぎててウケた。

ほんと本線に触れなすぎな感想だけど、自分にとって大事なことはほとんど書いたな。
CLAMP全作品中もっとも目のキワが鋭い作品。3.5点!
# by nanako_6150 | 2006-11-21 02:34 |       か行 22件
CLAMP 「CLAMP学園探偵団」 全3
頭脳明晰、眉目秀麗、加えてフェミニストな学生会役員3人組が
さまざまな女性の悩みを解決する学園コメディ。

CLAMP学園自体の初出は『20面相』で、以後『デュカリオン』や『X』でも
しばしば舞台となるのだけど、この作品時に大層詳細な設定まで
練られたみたいね。明らかに異世界ファンタジーなもの(『聖伝』
『CLOVER』等)以外は全部スピンオフってんだから、
大川女史の世界観のでっかさにはほんと、驚かされるわ。


小等部学生会会長の妹之山残が学園理事長の息子で、日本有数の財閥の
御曹司という設定なんだけど、彼の台詞にひどいのがひとつ。
会計の伊集院玲(『20面相』の主人公)との会話より。
玲「ざっと見積もって10億円です」
残「それなら僕のポケットマネーで十分だ
…なんで昔はここをスルーできたんだろう。
トラウマになるわ。

今読み返してみて一番の萌えポイント(探すな…)は残さんを支える書記の
鷹村蘇芳さんよね。作中の言葉を借りると、「言葉少なに寄り添ってるところがいい」。
光と影ね…。
オスカルに対してのアンドレ。速水真澄に対しての聖唐人。ユーリに対してのオスカー。
まあちょっと最後のは違うんだけど。
とにかく、生真面目で普段会長になんとか業務をさせようと必死なんだけど、
無表情な中にいたわりが見えたり、たまにめっちゃ笑顔になったり
幼稚園児に恋をして赤面してるのが、なかなかそそるな、と。
…え!?最後のまずくない?

この作品はストーリーは単純で特にひねりもないかんじなんだけど、
毎回のサブタイトルが名作映画からとっていたり、カラー絵もそれを意識していたり
けっこうCLAMPの趣味が反映されてるようで面白い。

CLAMP全作品中もっとも金銭感覚が狂う作品。3点。
# by nanako_6150 | 2006-11-03 00:35