律、……好き。
しょっぱなから告白で入りたいくらいに、主人公の飯島律はすてきだと思う。 切れ長の瞳に工夫のないシンプルな髪型、愛想はないが家族思い。 恋人どころか友達もいない。臆病だが行動力はあり。 小さいころから霊や妖魔が見えるという難儀な特性をもつわりには、 わりとスロウな生活を送る男。 なんか、いいんだよね。 律語りはこれくらいにして。 飯島家と妖魔の共存を描く一話完結型の物語ですが、もう、今市子の真骨頂てな ぐあいにストーリー構築の妙が光りまくってる。 読み進むうちに、作者の狙いが少しずつ分かってくる。 それは読者を騙す(…というと聞こえが悪い)もしくは惑わす(の方がしっくりくるか)こと。 妖魔とのやりとりの、不安な空気感を肌で感じさせること。だと思う。 その最たるは、文庫6巻収録「隣人を見るなかれ」かと。単に好きなんだけど。 まあ、この話はあらすじを書こうとすると否応なしにモロネタバレします。 物語は律を中心とした現在と、律の伯父の開を中心とした26年前とを平行して 描かれているのだけど、読者はふたりとも律だと勘違いするから同時間軸として 読み進めるんだよね。開はよく見れば律より面長でがっしり体系だし、律にいないはずの 友達までいるんだけど、「友達から紹介されたバイト」「来週は法事」等共通の キーワードですっかり惑わされる。 だけど微妙にかみ合わない。律あんたいったいなにやってんの? と不安に思ったら、もう今市子の術中というわけです。 他にも、風邪をひいてマスクと帽子を身につけているため正体が判然としない律を いとこの司が疑う「待つ人々」とか、幽霊視点から描くとなぜか律のほうが不気味に 見えてしまう「秋しぐれ」など。ぞんぶんに惑わされます。 この作品も他の今作品に違わず、女性の存在感の強いこと。 いとこの司は、死んでしまった律の父親孝弘の体に住み着いた青嵐のファンだし、 祖父の代からの因縁の妖魔、赤間(偽名)もぶん殴る。 もうひとりのいとこ晶は石に封じられていた人三化七の三郎と普通に付き合っている。 でもたぶん最強は律のお母さんなんだろうな。 あ、今回のレビュー過去最長?もちろん5点!!
by nanako_6150
| 2006-05-01 22:49
| 作者名 あ行 25件
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