きたきた~、カーラくん。
私はこの人の作品を手に取るまで、文庫マンガとは手塚治虫先生に 許された特権かと思ってた。なぜだか。 だからあのサイズのマンガを手に取ったときになんともいえない 違和感を持った。それまでりぼんっ子だったし。 でも違和感は別にサイズからきたものだけじゃなかったことに気づいた。 今まで触れたことがなかったような川原泉独特の作風に中てられてた。 哲学的で、やる気がなさそで、盛り上がりに欠けて、つかみどころが ないのだけど、どのページからもやさしさと笑いがにじみ出ている。 カーラくんのマンガはそんなかんじ。 で、この一冊はこれからぞくぞく出版される川原文庫マンガ一冊目となる短編集。 食によって結ばれる人々を描いた食欲魔人シリーズ6作と他、初期短編3作。 特に好きなのは食シリーズでは「不思議なマリナー」。 主人公がつり好きの女子高生という設定がまず絶好調で。 ちなみに「笑うミカエル」の聖ミカエル学園、初出しはこの作品。 なんか忘れられないセリフ「磯の王者イシダイ様の三段引きだあ~!」 「イシダイ様の前では釣り人はみな沈黙する」のせいで、 イシダイは様をつけるべきお方だという暗示から抜けられない。 他の短編、猫をかぶった義姉弟の反目の恋愛(?)を描いた「三月革命」。 これ、全川原短編の中でも1,2を争うほど好き。 川原作品には猫かぶりや、世間にうまく迎合できない人がよく描かれる。軽いタッチでね。 他人に見せられない部分があった方が人間はおもしろい。カーラくんんはそれを描くのがうまい。 ラスト、猫っ面を脱いで姉に冷たくあたっていた浩生くんの独白。 「やっぱりだめだったよ、あなたの背負っている猫ごと好きでした。」 そして、お互いのタテマエを超え、なんとなーく手をとり合う。 このぼんやり感になぜか感動してしまう。 川原マンガの特徴、食べるときの擬音「もぎゅもぎゅ」「ぐび~」なども絶好調。 ちなみに初期の絵は大島弓子さんを崩した様な絵です。それだけ。 言動、行動共に否応無しに影響を受けてしまった傑作集、4.5点。
by nanako_6150
| 2006-07-10 00:40
| か行 22件
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