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かわかずお 「パチ漫」 全1
ヴィレッジバンガードみなとみらい店曰く、
「今年(2006)の裏ベスト1!」

既存の作品を自己解釈で発展させたり(いわゆる同人)、自作に組み込んだものが
パロディ漫画。
既存の作品への敬意を込め、設定をそのままに新たな作風で別作家が描いたものが
オマージュ漫画。
既存の作品の作風を見事に再現しながら、内容をこねくりまわしたのが
パチ漫画…つまりパチ漫。

↑まったく根拠はありません。信頼禁止。

すごいよ、コレ。ほんと、芸術の域に達しているとか本来小畑健センセイに使うべき
賞賛をの言葉を間違えて使いたくなるほど、かわかずおのパチり具合はすさまじい。
線、効果、間、コマ割、ネタ、どれも完璧にパチっている。
絵だけならどっちが本物だか私には分からんもん。

以下めっちゃネタバレなので一応Moreに。普段なら気にせず書いちゃうんだけど、
コレはホント、画に加えてネタの輝きも勝負なので。自粛。

漫画に対する熱いラブレター!受け取れ!4点!




内容は、貧しい戦後の東京でゲン少年が丹下段平に見出され、ボクサー目指して
トレーニングをするがデビュー戦前に燃え尽きて真っ白な灰になってしまったという
『足立のゲン』。

ティッシュ会社のサンプリング(配布)部で働く新入社員のヒロ美が大抜擢され、
お蝶々婦人らの応援を受けながら大事な池袋通り(コース)のサンプリングで戦うという
『コースをねらえ!』。

おお、なんと心地良いくだらなさだろう。
『コース~』とか、ちゃんと配布ポーズがテニスフォームなんだよねー。
コーチ(作中では部長かなんかか?)の「サンプリングは配ったほうが勝ちだ。
勝敗を分けるのはいつでもたった1袋だ。だが配っているときはどれが
その1袋だかわからない」というセリフが妙にマッチ。元作品では「1球」だと予想する。

時事ネタも満載で、特に『哭きの龍 麻雀世界大戦 亡国の章』はもー最高だった。
麻雀漫画って読んだことないから元ネタ知らないんだが、コレ、オリジナルに混ぜても
いけるんでないですか?
さすらいの麻雀打ち龍は、金正目(キム・ジョンモク)、沙蛇無・布施淫(サダム・フセイン)、
条寺・武首(ジョージ・ブッシュ)との勝負で、時の刻みに運などないと解いていく。
布施淫が、早く打てと急かす龍に対して「このバチあたりめが~っ」と叫んで「西」を切ったり、
ダンゴが核マーク、竹がミサイルマークになっていたり、細かい絡め方がたまらん!
ラスト、2006年9月で任期を終えるあのお方
「龍~!お前の運をわしにくれや 総理にくれや~~っ」と泣く。
龍、独白「…悪いナ それロンだ」
終局。
おもわずニヤリとするうまい幕引きでした。

最後に収録されている『画の鳥(ENOTORI) 漫画編』はパチ漫史上に残る名作かと
思うのです。絶対数が少ないが。
バカにされながらパチ漫画を描いているかわかずおの元に、
伝説の画の鳥(クチバシがペン先)が現れる。
「アナタが本当に描きたいのはエロマンガではないのですか!?」
「か…描きたい…そうだ!エロ漫画が描きたい! ボンテージ衣装のデザインとか
楽しくて仕方ないんじゃ」
「では描くのです 完璧なオリジナルを!!もうパチ漫にみれんなぞないでしょう?」
「それは違う!!アレはワシの 漫画に対するラブレターなんだ!

…何言ってんだこのひと。めちゃくちゃあついな!
オリジナルの[未来編]になぞらえたラストは感動的です。
「かわかずおだった物体よ」だもんな。
猿田博士じゃねーって。

そんじょそこらのギャグマンガより笑えるし、青春モノのようなさわやかさ、ホラーの恐怖、
そして感動
かわかずお、おそるべし。
by nanako_6150 | 2006-08-25 02:08 |       か行 22件
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