木原敏江 「夢の碑(いしぶみ)シリーズ」文庫 全13+1 
古い時代に現れいつしか消えていった、「鬼」と呼ばれる
不思議な力を持った一族をテーマに描いた作品集。

これ、全くの短編やら1冊分の中篇やら3冊に渡る長編やら
いりまじってるから、感想かくのが難しいよ!
年代も、古くは70年代後半、新しいものだと90年代半ばまで、
約20年に渡って描いてるわけで、絵柄も1冊の中で激変。
ただ一貫して描かれているのは特異なるものの悲しさ、美しさ。
特に中世日本を舞台としたときの桜を用いた鬼の表現は
まさに美しくて儚くて、木原美の真骨頂ですとも!

一気に語るのは不可能ということで、各巻のサブタイトルとなっている
代表作品ごとに、ひとくちコメント+好き度を。一部チューボーですよ風。

・番外編 「大江山花伝」 ★★半
なぜか番外編から発売された不思議なシリーズ。
有名な茨木童子を主人公とした表題作もいいが、世阿弥の壮烈な半生を
描いた「夢幻花伝」がまじ切ないぞ。うまく能をからめてくるのもすてき。
あと、短編「花伝ツァ」のせいで(私を含めた)一部のお腐れ様の間で
「兄長(このかみ)」ブームが。

・1 「とりかえばや異聞」 ★★★(いただきました!)
戦国大名の兄に代わって戦った紫子(ゆかりこ)と、彼女を愛し助けた鬼の末裔・吹雪の物語。
譚の始まりとしていながら、実は終わりでもある。今まで死で終わってきた悲しい
鬼の恋を打開した記念すべき2人の物語。船乗り役として「まりしん」の鴨さんや麿が出演
しているのもおいしい。

・2 「青頭巾」 ★★半
私事ですが初めて読んだ木原作品。自己愛が過ぎて桜の魔物となった秋篠は
シリーズを通して鬼の負の部分として頻出。2巻にも登場。
ほか短編ではめずらしく洋物の「封印雅歌」が耽美(デカダン)。

・3~5 「鵺(ぬえ)」 ★★★(いただきました!)
最初の長編。江戸を舞台にした人情物の一面をもった暗黒絵巻。
主人公の美青年・篠夫さまが愛を求めるがゆえに、相手の気持ちが
すこしでも他に揺らぐと殺してしまう恐ろしい性癖の持ち主という設定。
最初の奥さんの可那枝が不細工だが賢いというキャラの見せ方に驚嘆。
江戸の粋を感じる髪結い床や常磐津などがたまらない。
このマンガのせいで江戸東京博物館に3回行った。

・6 「雪紅皇子(ゆきくれないのみこ)」 ★★
木原さんがよく描く南朝の隠れ里の物語。この頃(90年半ば)の絵は
目元口元の描き方とトーンの多様のせいで、特有の繊細さを感じなくなって
しまったのが残念。

・7 「ベルンシュタイン」 ★半
短編「ぎやまんハートブレイク」と「ダイヤモンド・ゴジラーン」(なんつー)が
おもしろい。後者はこのシリーズにいれていいのか多いに疑問だけど。

・8~10 「渕となりぬ」 ★★
「夢幻」につづいて猿楽の若者を主人公とした長編。芸に工夫をこらし成り上がっていく
ストーリーは面白いが、これも90年代半ばということで絵のほうの不満と、
少し同性愛が儚げでないところが気に食わない。最終巻の著者によるメイキングが
一番おもしろい。天才らしくちょっといっちゃってるぐあいがグー。ぷっつん。

・11~13 「風恋記」 ★★★(いただきました!ってしつこい!)
合わせて一対となる力を分け合った二人の数奇な運命の物語。「とりかえばや」の
吹雪と紫子が運命を断ち切った者であり、この二人が運命を受け入れた者として、
シリーズの最後を締めくくっている。この頃の絵は最高に麗しい。そして主人公のひとり
露近の、稚児の頃のあの髪型!眉横の姫カット!可愛すぎる!やばいっすねー。(私が)
最終巻の解説はなんとあの池田理代子大明神。出版社の遠足に一緒に行ったんだってさ。


ふう、なんとかレビューの体裁をとったぞ。この、マンガに対してにのみ働く
トンデモ記憶力が役に立った。
★評価はあくまでこのシリーズの中で見ればっていう相対的なものなので
やはりどれも面白いよ。

桜に特別な美を感じる日本人よ、これを読めばよりいっそう花見がしたくなるのだ!4.5点!!
でも死体は埋めないでっ!
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by nanako_6150 | 2006-09-26 04:09 |       か行 22件
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