木原敏江 「花の名の姫君」文庫 全1 
4編の歌舞伎作品を、後期木原マンガの独特の、人情味にあふれながらも妙に
あっけらかんとした作風で描いた短編集。

歌舞伎ってほんと、すごいドタバタコメディーだよね。もちろん悲恋も多いけど
あんまり悲壮感はなくって、この一冊で扱ってるのは、和尚さんが煩悩と戦ったり、
お姫さまが泥棒の女房になって復讐を果たしたり、大奥の権力争いだったり、
竜神の化身が人間に誘惑されたり…ネタ的には日テレ連ドラ並み
多数の死傷者が出た割には最後はあっさり大団円で流しちゃうあたりに、「ああ、江戸の
庶民たちはこれを見て 『やーおもしろかった、明日からまた元気に働こー』って思ったの
かな」とか勝手に想像。見た後に後味悪くなるようなのってあんまない気がする。
ドストエフスキーばりの無常作品だと、『オレ人生について考えたいから今日休業』ってことに…
なっても面白いけど。

一話目の「花の名の姫君」(鶴屋南北「桜姫東文章」より)の主人公が使う一人称は
「みずから」です。わたしはこの作品以外でこうゆう「みずから」の使い方をしているのを
聞いたことがない。これは「使ってみたいけど一生その機会がないだろう珍一人称」リスト
間違いなく名を連ねるだろう。

使ってみたいけど一生その機会がないだろう珍一人称

・朕(ちん)      天子じゃないから使えない。しかしまれに文語で常用する日本人がいる
・拙僧(せっそう)  僧じゃないから使えない。しかしまれに常用する非仏教徒がいる
・小生(しょうせい) 女の子なので使えない。実はわりと文語で使う人がいるが、
             あまりへりくだって聞こえないのが不思議。
・わし         老人になってから使いたいが、フィクション以外でご老人が使っている
             のを聞いたことがない。もっぱら小林よしのりとオタク専用一人称
・みずから      身分の高い女性ではないので使えない。たぶん一生ならない。

日本語って奥が深いなーと思いながら、この自由度を楽しもう。3点。
            
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by nanako_6150 | 2006-10-05 19:54 |       か行 22件
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